2012年7月29日日曜日

情報は世界を征す


  「世は、将に、情報化時代である。」という事になっています。
1950年代に、アルビン・トフラーは、その著書「第三の波」の中で、
農業革命、産業革命に次ぐ、脱産業社会の到来を予言しました。
    当時の人々は、その予言を全く信じませんでしたが、1999年に
ノストラダムスの予言が外れて、2000年問題が不発に終わり、21世紀
に突入すると、誰もがトフラーの予言は的中したと思うようになりました。
 この情報化時代の到来は、コンピューター(電子計算機)の技術革新
によって、もたらされました。CPU(中央演算装置)の速度は、GHz(ギガ
ヘルツ)を超え、1TB(テラバイト)のHDD(ハードディク・ドライブ)が、ポケット
に入る様になりました。
  GHz(ギガヘルツ)のCPUとは、1秒間に1億文字を情報処理することが
できる能力であり、1TB(テラバイト)のHDDとは、1兆文字の電子情報を格納
できる装置です。人類は、僅か50年で、コンピューターの処理能力を、
このレベルにまで、向上してしまいました。
 実は、コンピューターの発達と宇宙開発とは、非常に深い関係にあります。
1960年、最初のコンピューターが開発されてから10年後に、アメリカの
ケネディ大統領は、「ソ連を必ず抜き返し、60年代の終わりまでには、
アメリカ人を絶対に月に送ってみせる。」と公約して、1970年にアメリカは、
アポロ11号でアメリカ人を月へ送り込みました。
  アメリカにとって、人類を月へ送り込むロケットを開発することは、さほど、
難しいことではありませんでした。問題は、ロケットを正確に月へ到達させる
ために必要な、月と地球との位置関係が最適な日時と、最適な発射角度と、
最適な運行速度を算出することでした。これらの数値は、ニュートン力学の
公理に基づき、微分方程式で表すことができます。
  しかし、表された微分方程式が解を持つとは限りません。むしろ、解を持つ
方程式は圧倒的な少数派で、しかも、ニュートン力学の公理に基づいて表現
された微分方程式は難解で、簡単に解くことはできませんでした。
 前者の課題、解を持つ微分方程式を見分ける方法は、19世紀末にフランス
の数学者コーシーによって発見されていました。残されたのは、後者の課題、
難解な微分方程式を解く方法を見つけることでした。微分方程式を解くためには、
複雑な計算(積分)を何度も、何度も繰り返して、存在する関数に辿り着く必要が
あります。しかし、解に辿り着けなくても、複雑な計算(積分)を何度も、何度も
繰り返せば、限りなく解に近づくことはできます。要するに、複雑な計算
(積分)を何度も、何度も繰り返し行える装置があれば良い訳です。それが、
コンピューターでした。
 当時のコンピューターは、真空管やトランジスタを利用した比較的処理能力
の低い計算機でした。しかし、1957年に、江崎玲於奈が開発した半導体
ダイオードによって、コンピューターの処理能力を飛躍的に向上させることが
可能になりました。
 これで、全ての条件が揃い、ケネディ大統領は、「アメリカ人を絶対に月に
送ってみせる。」と公約できたのです。その後、処理能力を飛躍的に向上させた
コンピューターは、宇宙開発のみならず、ビジネスや生活に利用されるように
なった事は、周知の通りです。
 人類は、農業革命によって、人々を飢餓の恐怖から開放し、産業革命によって、
人々を過酷な肉体労働から解放しました。しかし、脱産業社会の到来は、
人々を何から解放しようとしているのでしょうか。私は、脱産業社会の到来は、
人々を3次元空間の呪縛から開放しようとしていると、考えています。
人々の存在空間は、バーチャルな空間に爆発的に拡大しています。
 産業は、地球を飛び出して、宇宙に展開しようとしています。空間(場所)
を共有することは、重要な意味を持たなくなり、物理的な距離は、阻害要因
ではなくなっています。しかし、農業革命がもたらした富が、人々を争い事
に駆立て、産業革命が核兵器を産出したように、脱産業社会が産出した膨大な
情報は、人々に重く圧し掛かって、心や精神を痛めつけています。
 かつて、チャップリンは、映画「モダンタイムス」の中で、産業革命によって
産出された機械に、隷属させられる人の姿を描きました。機械が、道具であり
手段であるように、情報もまた、道具であり手段です。手段が目的やゴールに
なることはあり得ません。人が、情報という手段を使って、世界を征すること
があっても、情報が人を征する事は、在ってはならないのです。
タイムトンネル

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